研究概要 |
4,4-ジピリジルジアゾメタン1とMn(hfac)_2またはCu(hfac)_2を1:1の割合で混合することにより,1:1錯体をそれぞれ赤橙色,暗緑色結晶として得た。X線結晶構造解析の結果,2個のピリジン環はMn錯体ではMnイオンにシス配位したらせん型およびトランス配位したジグザグ型一次元鎖状構造を,銅錯体ではトランス配位し一次元鎖状構造を持つことが分かった。得られた結晶について,Nd/YAGレーザーの第二高調波(532nm)を用いた光反応における,照射前後の磁気モーメントの測定をSQUIDを用いて2-300Kの温度範囲で行った。Mn錯体の磁化率の温度依存性は,光照射前は一次元鎖の中でMnイオンが磁気的に孤立していることを示した。一方,光照射後は,発生したカルベンとMnイオンとの反強磁性的相互作用に基づくフェリ磁性的一次元鎖が形成していると考えられた。98時間光照射後のχTの最大値は約300個のMn-カルベンユニット(S=3/2)が磁気的に連結していること,すなわち900個の電子スピンを平行にそろえたことを意味する。また,同様な測定により1:1銅錯体では,光照射により発生したカルベンと銅イオンとが強磁性的相互作用し,強磁性的一次元鎖が構築されたことを示した。
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