研究概要 |
1.吸収性回折格子利得結合(GC)分布帰還型(DFB)レーザの開発:波長1.55μm帯のGC DFBレーザを,吸収性回折格子構造に基づいて,試作・開発した.活性層は圧縮歪みInGaAsP多重量子井戸を,また吸収性回折格子層としてはInGaAsを用いた.素子は,閾値20〜30mAで室温連続動作し,端面に無反射処理を施すことなく,副モード抑圧比40〜55dBの良好な単一モード発振を,高歩留まりで得ることができた.2.反射戻り光耐性評価:上記GC DFBレーザの反射戻り光耐性を測定評価し,臨界戻り光レベルが,利得結合係数の増加とともに改善されることを見い出した.3.発振波長トリミング:波長多重(WDM)光通信システムに向けた新たな概念「波長トリミング」を提唱し,その実現方法を研究した.まず,カルコゲナイドガラスの光誘起屈折率変化を利用した波長トリミングを試み,レーザ活性層直近に同ガラスを装荷する新しい構造を開発して,He-Neレーザ照射により1.55μm帯で0.14mmの波長トリミングを実現した.次に,量子井戸の光吸収誘起無秩序化を利用した波長トリミングを試み,YAGレーザ照射によって0.36mmに可変幅を得た.4.GC DFBレーザトライオードに試作:4段階有機金属気相エピタキシ-(MOVPE)によって,GC DFBレーザトライオードを作製することに,世界で初めて成功した.素子を測定評価した結果,第3端子に電圧を印加することで,吸収性回折格子の吸収系数が変化すること,結合係数が変化すること,などを実験的に観測・検証した.5.アナログ変調歪の解析と測定評価:吸収性回折格子型GC DFBレーザのアナログ変調歪を,新たに開発した手法により数値解析した.その結果,二次高調波歪については,活性層の利得圧縮の効果と吸収格子の吸収圧縮の効果が相殺し,歪の小さくなることが明らかになった.これを検証すべく,変調歪の測定評価予備実験を行った.6.量子細線構造GC DFBレーザの試作:V溝基板上へのMOVPE成長を利用し,InGaAs歪み量子細線を活性層とするGC DFBレーザを世界で初めて試作した.
|