研究分担者 |
若林 英信 京都大学, 工学研究科, 助手 (00273467)
山根 常幸 (株)東レリサーチセンター, 材料物性研究部, 研究員
亀谷 雅嗣 (株)日立製作所, 機械研究所, 主任研究員
田中 貞行 福井工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (80042969)
馬場 哲也 工業技術院計量研究所, 計測システム部, 室長(研究職)
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研究概要 |
本研究は,表面の熱ふく射現象計測のための高速スペクトル分光法の開発をめざすものである.その目的とするところは,実在表面の熱ふく射特性の基礎研究と,ふく射を利用する表面診断法の開発にある. われわれは,まず,可視〜赤外の波長域を1台の装置で高速に繰り返し走査するスペクトル測定装置を開発した.この装置は,2種の光源,4組の分光系と検知素子アレイ(計99素子)からなる.この4組の分光部をコンピュータ制御するモータで連結し,その99素子の出力を電子的に走査して高速スペクトル測定を実現する.この装置を波長λ=0.35〜5.5μm域で用いて,高温大気酸化過程にある金属表面の反射・放射スペクトルの推移を測定した.スペクトルに見出されるふく射干渉・回折現象の推移を通じて,酸化被膜の成長のようす,成長する被膜の結晶粒が被膜表面に生むあらさの程度などが推定できることがわかった. ついで,われわれは,スペクトル推定に基づく表面のインプロセス診断のアルゴリズムを提案した.それは,初期状態で表面に薄い酸化被膜がある金属光学鏡面が酸化したあらい表面に推移する過程で,波長λ_i(i=1,2,....,n)における(-θ)方向放射エネルギーu_iとθ方向入射鏡面反射方向エネルギーv_iを測定し,そのデータを解析して,表面の温度T,(-θ)方向指向放射率εとθ方向入射鏡面反射方向反射率Rのスペクトル,被膜の光学定数nのスペクトル,平均厚さd,被膜表面のrmsあらさσを時々刻々に診断するものである.開発したスペクトル装置をλ=1.1〜1.8μm域で,上記の実験と同様の実験に用いて,放射・反射エネルギーを同時に測定し,その結果を上述のアルゴリズムで解析した.本研究の方法が,優れた確度で温度を診断し,同時に表面の正常を精度よく診断することを例証した.
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