研究概要 |
本研究では,大電流アークの遮断メカニズムを実証的に解明するために,電流零点以降におけるノズル空間域の残留アークの内部構造を実験的に検討し,次の知見を得た。 1.多地点多波長同時スペクトル観測システムを構築し,遮断器内ノズル空間の分光観測を可能にした。 2.遮断器内ノズル空間を模擬したSF_6ガス吹付け平板状アーク装置において,アーク消弧後の極間温度低下過程を実測した。波長426および443nmにおけるFeスペクトル放射強度を用い,電流零点後の残留アーク温度低下を3500K程度まで測定することに成功した。 3.温度計測で用いた2本のFeスペクトルと,バックグラウンド光として測定していた波長455nmでの放射強度とを利用して,鉄蒸気混入率を推定する手法を開発し,実際に平板状アーク装置の残留アークの鉄蒸気混入率が0.01%程度であることを明らかにできた。 4.アーク消滅前後における極間の抵抗率の上昇過程について検討した。その結果から,導電性の高い部分を「熱プラズマ接点」とみなす新しいモデルを提案し,その開極動作によってアーク遮断の成否を説明することに成功した。 5.電流零点後に遮断器の極間に高い過渡回復電圧が印加される場合について,熱的非平衡性の影響を検討するための基礎データとして,電子温度がガス温度より高い二温度状態におけるSF_6プラズマの粒子組成および導電率を算定し,アーク遮断過程に熱的非平衡性が影響を与える可能性があることを示唆した。
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