研究概要 |
1)ソフトウェアツールMosimulの開発:多モード干渉(MMI)カプラの動作特性解析と設計を行うためのシミュレーションソフトウェアを,固有多モード展開法に基づいて開発し,これをmosimulと命名した.これを利用して,入射導波路をMMIカプラへ広角で結合した場合の特性を研究し,光集積回路上のコンパクトなベンディングデバイスとして利用可能であることを示した,2)MMIカプラ半導体光スイッチングデバイスの波長多重光交換への適用可能性:本研究の光スイッチングデバイスが光交換に適用された場合に,どの程度のメリットが生じ得るかを検討し,従来に比べ30dB以上の損失の改善が図られることがわかった.温度制御もユニット全体で一つあれば十分であり,素子間のアライメントも不要になる.3)有機金属気相拡散選択エピタキシ-技術の開発:モノリシック光集積回路を作製するにあたり,能動素子と受動素子を一括集積化する技術として,有機金属気相拡散選択エピタキシ-(metal-organic vapor phase diffusion enhanced selective area epitaxy;MOVE^2)を新たに開発した.これを用いると,1.55μm帯における能動領域と受動領域のバンドギャップ差を,組成の差のみの場合で200nm,組成と量子井戸層厚の差の両方を利用できる場合で500nmと,従来に比べ格段に大きくできる.従って,受動領域の吸収損失を最小限に抑えることが可能となる.4)MOVE^2を利用したMMIカプラ試作・開発:上記MOVE^2を応用して,MMIカプラの作製に初めて成功した.1.25μm組成のInGaAsPをコア層とし,その上にInPクラッド層をMOVE^2により形成した.MMI部の膜厚のばらつきは,伝搬軸に垂直な方向で5%以内,伝搬軸方向で10%以内であり,従来の選択成長より格段に小さくなっている.このMMIカプラにおける出力のばらつきは無視できる程度であって,挿入損失はMMI部の長さが30μmの時に2dBであった.
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