研究概要 |
電子装置が家庭およびオフィスで日常的に用いられるようになった現在ディジタル電子機器から放射される不要な電磁波の低減すなわちEMC設計は、その装置の設計・開発時の最重点課題のひとつである。従来はこの作業は試行錯誤的に行われてきたが、それでは工業的な要求に合わず、さりとてMaxwellの方程式に立脚する厳密な方法はコストがかかりすぎて実用的でない。本研究は、測定し易い近傍電磁界に着目し、その実測結果から遠方界すなわち電磁波の放射量を推定する方式を開拓しようとするものである。 そのために、回路に流れる電流のモデルを作成する必要がある。CMOS集積回路から成る回路を対象に効果的な方法を開拓し【宮下他、電気学会論文誌C,Vol.116-C,1301(1996)】、また現実の電子回路を対象に、その近傍の電磁界を測定することにより、電磁波の放射に関する電流成分を推定する測定装置とその運用方法を開発した。その結果得られる電流から放射される電磁波を高速に計算する簡易計算モデルを作成した。【宮下他、電子情報通信学会論文誌,Vol.J79-B-II,805(1996),M.Torigoe他,IEICE,Trans.Comm.,Vol.E80-B,1663(1997)】。 さらに、電子回路が逆に妨害波を受けた場合の誤動作を起こすメカニズムについて実験的考察を行った【N.Kagawa他、IEICE,Trans.Comm.,Vol.E80-B,1652-1653(1997)】。
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