研究概要 |
ガラスファイバーやセラミックファイバーの多孔体は気孔率が高く流体の透過性に優れていることから高耐熱性,高耐化学性の多孔質膜やバルク体の作製に適している.これらファイバー自体を多孔質化すれば高比表面積で複機能性を有する多孔質セラミックスの作製が期待できる.この観点から,高温での耐熱性,耐酸化性および耐化学性に優れるムライト(Al_<4+2x>Si_<2-2x>O_<10-x>)の多孔質ファイバーの作製を試みた. 試料は,市販のAl_2O_3-SiO_2系のセラミックファイバーを熱処理してファイバー中にムライト粒子を結晶化させた後,エッチング液を用いてムライト粒界のガラス部分を選択的に溶解処理して多孔質ファバ-化する方法で多孔質ファイバーを作製した.まず,エッチング液としてNaOH,フッ酸(HF-H_2SO_4)およびバッファードフッ酸(HF-NH_4F)を用いて,エッチング液の濃度,温度,固液比,処理時間を変えて選択溶解性について検討した.その結果,NaOHとフッ酸では十分な選択性が得られなかったが,バッファードフッ酸を用いると良いことが分かった.そこでさらにHFとNH_4Fのそれぞれの最適濃度を求めた. 次に,ムライトの結晶化温度を変えながらエッチング条件と得られる多孔体の細孔特性の関係について検討した.その結果,1100,1150,1200,1300℃で結晶化した試料に対して比表面積が約20,32,28,12m^2/g,細孔径が5〜15,8〜16,14〜16,36nmの多孔質ファイバーが得られることが分かった.このようにファイバーの結晶化温度と処理時間をパラメータとすると,上記範囲で細孔径特性を制御できることが分かった.また,得られた多孔体の細孔の耐熱性について調べた結果,調整時に得られた細孔特性は1200℃まではほぼそのまま維持されており,期待通り耐熱性の非常に高い多孔質ムライトファイバーが作製できることが明らかとなった.
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