研究概要 |
フェライトの有効な核生成サイトであるオーステナイト粒内の(MnS+V(C,N))複合析出物上に核生成したフェライト相の結晶学的特徴について,(非整合MnS+V(C,N))上にフェライトが生成するFe-2Mn-0.2C-0.3V-0.0114N,Fe-1.5Mn-0.2C-0.15V-0.0215N(mass%)合金を用いて光顕,SEM(Hitachi S-3100),TEM(Philips CM200)による組織観察により調べた. オーステナイト中の(MnS+V(C,N))複合析出物上に生成した粒内フェライトのマクロな形態は種々異なっていた.V(C,N)/γ界面に核生成したフェライトのTEM写真である.このようなフェライトは,V(C,N)に対して一定の結晶方位関係を持たないが,低指数面および方向が比較的平行に近い関係を持ち,Baker-Nuttingの関係も一部には観察される. 粒内フェライトと,オーステナイトに対して特定の結晶方位関係(K-S関係)を持つラスマルテンサイト2)との相対的関係を調べ,(MnS+V(C,N))複合析出物上に核生成したフェライトとオーステナイト母相間の結晶方位関係についてSEM-EBSP解析により検討した結果,粒内フェライト間の方位関係を全てK-S関係のバリアントで説明することは不可能であることが分かった.また,Kikuchi線解析により決定した粒内フェライト/マルテンサイト間の関係も,K-S関係のバリアントには当てはまらないことがわかった.以上の結果より,(非整合MnS+VC)複合析出物上フェライト核生成においては結晶方位関係のランダム化が起こることが明らかとなった.
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