研究概要 |
1.不働態皮膜の不均一性を評価するための走査電気化学顕微鏡を試作した。走査プローブ電極には,ガラス管に封入した直径10μmの白金線(先端はディスク状)を採用した。プローブ電極の電位と試料電極の電位を独立に制御できるように,市販のポテンショスタットをバイポテンショスタットに改良した。Tip Generation/Substrate Collection(TG/SC)modeによるプローブ電流像の面分解能は,プローブ電極の直径の2倍(約20μm)であった。 2.エポキシ樹脂に埋め込んだ二つの鉄電極上にそれぞれ厚さの異なる不働態皮膜を作成した後,SECM測定をFe(CN)^<4->_6を含むpH8.4ホウ酸塩水溶液中でプローブ電極をFe(CN)^<4->_6が酸化される電位に,鉄電極をFe(CN)^<3->_6が還元される電位に保持するTG/SCmodeで行った。その結果,プローブ電流像から不働態皮膜の厚さの違いを区別することができた。また,表面に結晶粒を出現させた多結晶鉄電極上に作成した不働態皮膜は,皮膜厚が下地結晶粒に依存して不均一になることが明らかになった。プローブ電流値より,下地結晶粒の配向{110}<{111}<{100}の順に皮膜が増加することが示唆された。 3.電解研磨したチタンをpH8.4ホウ酸塩水溶液中で動電位アノード分極することにより作成した不働態皮膜のSECM測定を,Fe(CN)^<4->_6/Fe(CN)^<3->_6系を利用してTG/SCmodeで行った。その結果,皮膜作成時の分極電位が4VSHE以上で,皮膜の不均一性が顕著になることがプローブ電流像から明らかになった。プローブ電流像から観測される皮膜の不均一性は,下地チタンの結晶粒の形状に一致した。このことから,皮膜の欠陥濃度あるいは膜厚が結晶粒によって異なることが示唆された。 4.現在,プローブ電極に光ファイバーを装着することにより,試作した走査電気化学顕微鏡を走査光電気化学顕微鏡に改良し,アルゴンレーザ光照射下でのプローブ電流像と暗プローブ電流像との比較より,不働態皮膜欠陥濃度の不均一性を評価している。
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