研究概要 |
有機シリコン化合物を原料とした低温マイクロ波プラズマCVD法により,高はっ水性薄膜の低温形成を行った.パ-フルオロアルキルシラン(FAS)を,はじめてプラズマCVD用原料として使用し,その可能性を探索した.作製膜のはっ水性は,FAS分子中のパ-フルオロアルキル基の長さに依存し,水滴接触角は最大でテトラフルオロエチレンと同等の約107度を得た. 成膜中に原料ガス種や供給量を制御する多段階プロセスを導入することにより,はっ水性・透明性・硬度を併せ持つ酸化シリコン系薄膜の低温形成プロセスを開発した.酸化シリコン層の形成には,テトラメチルシラン(TMS)と酸素を用いた.所定時間成膜後,酸素供給量を徐々に減少させ,はっ水源となるFASを反応容器中に導入して,はっ水層を形成した.はっ水層の成膜時間を短くすることにより,低温でホウ珪酸ガラス並の硬度を有するはっ水性酸化シリコン系薄膜の作製が可能となった.得られた薄膜は可視光領域全域にわたって90%以上の光透過率を示した. 表面形態を制御することにより,水滴接触角150度以上の超はっ水性酸化シリコン系薄膜を,マイクロ波プラズマCVD法を用いて作製した.原料ガスとして,TMS,ヘキサメチルジシラン等のメチル系有機シリコン化合物と,FASの混合ガスを用いた.作製膜表面の凹凸は原料ガス組成と成膜圧力によって制御でき,凹凸が大きいほどはっ水性が高くなった.成膜条件をさまざまに変えることにより,水滴接触角160度の超はっ水性薄膜を作製することに成功した. 超はっ水性と透明性を併せ持つ高機能薄膜を作製するため,マイクロ波プラズマCVD法におけるさまざまな成膜パラメータを最適化させる研究を行った.原料ガスとしてTMS,メトキシトリメチルシラン(TMMOS)等のメチル系有機シリコン化合物とFASの混合ガスを用いた.表面の凹凸と直接関係する成膜パラメータであると考えられる,全圧,原料ガス組成,原料ガス供給口-基板間距離および基板温度をさまざまに変化させた.その結果,水滴接触角150度以上の超はっ水性と可視光透過率80%以上の透明性を両立させる条件として,作製膜表面の凹凸の最大高低差を約300nm程度に保つことを見いだした.
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