研究概要 |
本研究は「気泡塔型バイオリアクターの培養特性」と「有用物質の分離精製法の開発」の2部からなる。 気泡塔型バイオリアクターの培養特性 バイオリアクターの培養特性は,装置の流動,伝熱,酸素移動,混合などの物理的特性と菌体そのものの特性によって決まり,両者は互いに影響し合っている。 菌体ペレットを形成する培養系に適したテーパ付エアーリフト塔を試作し,テーパ部におけるガスホールドアップと液流速の分布を測定し整理した。標準気泡塔における菌体ペレットの浮遊条件を明らかにした。 培養には標準気泡塔と液外部循環式エアーリフト塔を用いた。培養系として,スエヒロタケによるリンゴ酸生産と,マツタケ菌糸の大量培養を用いた。前者に関してはリンゴ酸収率が最大となる培養条件(グルコース濃度,炭酸カルシウム濃度,温度,空気流量)を見いだした:エアーリフト塔の方が標準気泡塔よりも適していることが分かった。後者の培養に関しては,塔形式や空気流量によって,菌体は3つの形態(大球形,小球形,線条ペレット)を示した。この系には標準塔の方が適しており,最適空気流量が存在した。 有用物質の分離精製法の開発 キノコ菌は多くの有用タンパク質を生産するので,有用物質のモデルとしてタンパク質を取り上げ,逆ミセル,および水性二相分配によるタンパク質の分離精製法について検討した。 両親媒性分子として,イオン性のAOTを用いた逆ミセル系でlysozymeをモデルタンパク質として,最小AOT濃度,および最適AOT濃度を見いだした。lysozymeとcytochrome cの2成分タンパク質系の最小AOT濃度は各タンパク質単独の最小AOT濃度の和よりも小さいことが分かった。また,タンパク質変性剤である塩酸グアニジンを少量添加すると最小AOT濃度は減少し,タンパク質構造の安定化剤である糖を添加すると抽出は抑制された。これらから,タンパク質構造の安定性が逆ミセル抽出に対する重要因子であることが分かった。 イオン性逆ミセル系での強い電荷によるタンパク質の変性を避けるため,非イオン性両親媒性分子であるSpan60,ショ糖脂肪酸エステルを用いたタンパク質の抽出を試み,成功した。さらに,Triton X-114による水性二相分配系でのタンパク質の分配挙動を調べ,分配係数が塩の添加により変化する事を見いだした。
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