研究概要 |
土壌ガスに含まれるラドン濃度の時間的・空間的変動に基づき,地下浅部に胚胎している熱水の状態を推定するためのシステムを構築した。本研究の成果は以下のようにまとめられる。 (1)阿蘇山火口西側で南北方向の断層上に位置すると考えられ,噴気を伴う3つの温泉地区に深さ1mの観測孔を設け,シンチレーションカウンター法によって^<220>Rnと^<222>Rnの壊変に伴うα粒子数を測定した。これに研究代表者らが考案したラドン原子数算定理論を適用し,半減期の長い^<222>Rnの原子数とラドンガスの年齢を求めたところ,それらの時間的変動は火山性地震の活動と関連していることが明らかになった。 (2)地表面の分解能が高いSPOT Panchromatic画像を用いて,対象温泉地区周辺のリニアメントを詳細に抽出した。これに数値地形モデルを重ね合わせることで,熱水の通路となり得る断層は斜面と逆方向に傾き,その傾斜角度は80°であると推定できた。 (3)断層を組み込んだ地質構造モデルを用いて熱水流動の3次元数値シミュレーションを行い,深部熱水状態の擾乱に伴う地表面下浅部の温度と圧力の変化を算定したところ,熱水の対流が大きい地点ほどそれらの物性値の変化が大きく,ラドン濃度が著しく変化することが推定できた。すなわち,火山性地震とラドン濃度の変動とが密接に関連する地点ほど地熱ポテンシャルが高いといえる。 このように浅熱水性資源を評価するには,衛星画像と数値地形モデルとの組み合わせから地下断裂系の分布形態を推定し,ラドン濃度の時間的変動に特徴がある地点を見出し,さらにこの変動と断層の形状に調和するような熱水流動の数値シミュレーションを行うことが必要である。
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