研究分担者 |
梶山 幹夫 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (40191978)
竹村 彰夫 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (50183455)
大井 洋 筑波大学, 農林工学系, 講師 (20201965)
黒田 健一 筑波大学, 農林工学系, 教授 (80015908)
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研究概要 |
リグニンをオゾン酸化すると,共役二重結合の両末端にカルボキシル基またはエステル基を有するムコン酸誘導体が生成し,新たな官能基が導入されるので種々の化学的な修飾が可能となる.本研究では,リグニンやオゾン酸化リグニンがアルカリ水溶液に溶解することを利用し,これと水溶性エポキシ化合物と硬化剤を混合するだけで樹脂化するシステムを開発することを目的としている. リグニンと水溶性エポキシ化合物の反応性を検討したところ,有色ながら透明な樹脂が得られ,この系が相溶系であることが確認された.また,各種の溶剤に殆ど不溶であることから三次元網目構造が形成されているいることが確認された.動的粘弾性の測定の結果,リグニン含有率が増加するに従って,硬化樹脂のガラス転移温度が高温側に移動し,幅広い緩和機構を示した.一方,エポキシ化合物や硬化剤の種類を選択することで網目鎖の撓み易さが変化することを見出し,硬化樹脂のガラス転移温度を任意に設計できることが判明した.また,構造のことなる2種類のエポキシ化合物をブレンドした系では,ガラス転移に起因するピークが1つしか見られないことから,ある種の相互侵入型高分子網目(IPNs)が形成されている可能性を認めた.また,全ての硬化樹脂は,低温域に大きな副分散を有しており,この緩和機構の寄与によりダンピング材料等への応用が期待できる.なお,オゾン酸化の樹脂物性への影響は顕著でないことが判明した. 樹脂を生分解性ポリマーとして利用する予備段階の検討として,クラフトリグニンのオゾン酸化物を白色腐朽菌の一種で処理したところ,オゾン処理の効果は顕著ではなかった.
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