研究概要 |
遊泳行動追跡装置の開発は,2つの部分に分けて行なった.1)は高速で遊泳生物の行動を追跡し,移動する個体位置の連続記録可能な装置を開発することである.2)は生物個体の情報を超音波により搬送させ,1)で開発した装置により船上で受信し,記録するシステムを開発することである.両者を組み合わせることにより,初期の目的が達成される.原理は,対象生物に小型超音波発信機を装着し,そこから発信される信号を曳航式デプレッサーに送着した4個のハイドロフォンで受信し,受信音圧差から船上のマイクロコンピュータを通して位置情報とともに記録し,解析するものである.曳航式受信装置は別途予算で平成7年度に基本部分の設計を終え,完成品の受信状況と曳航性能テストをこの科学研究費により平成8年度に行った.その結果,最大5ノットで約1km先の個体から信号を得ることに成功した.高速で探査可能となったことは,見失った個体を広域探査する時や,遊泳速度の早い個体の追跡にも効果的であることが分かった.2)の生物情報収集システム開発として,自由に遊泳している魚個体から心臓の鼓動を得るための,心拍ピンガーを開発した.心臓の鼓動は個体のストレスや,摂餌・睡眠状態,環境水温変化の影響などを把握するのに有効である.平成9年度には長さ50mm,直径15mm,空中重量20gのピンガーを開発し,行動とともにマダイから30時間にわたって連続的に心拍数を計測することに成功した.これら,一連の成果から,この科学研究費により開発したシステムは市販することが可能となった.
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