研究概要 |
1.打撃実験 [方法] 頭部模型に加速度センサーを取り付け,後頭頭頂部を鉄製のハンマーにて打撲する実験,自然落下せしめて車輛の各部に,またコンクリート,鉄,木材に衝突させる実験を行った.ハンマーの衝撃力,頭部模型の衝突速度および衝撃加速度を測定した.衝撃加速度の最大値,持続時間を計算した. [結果] 1)打撲実験では,重量820gのハンマーの場合,衝撃力の最大値は200kg,持続時間は2.0msであった.模型頭部の衝撃加速度の最大値は23g,持続時間は2.0msであった.重量1,480gのハンマーでは,衝撃力の最大値は206kg,持続時間は2.6msであった.模型頭部の衝撃加速度の最大値は25.4g,持続時間は2.6msであった. 2)車輛への衝突実験では,衝突速度は5.59-6.46km/hであった.衝撃加速度の最大値は,ボンネットへの衝突では13.6-35.4g,フェンダーで45.3-53.2g,フロントガラスで33.5-62.1g,ピラ-で60.8-66.4gであった.衝撃加速度の持続時間は,ボンネットで19.5-38.0ms,フェンダーで14.0-15.0ms,フロントガラスで10.5-17.5ms,ピラ-で12.0msであった. 3)落下実験では,衝突速度は6.25-6.57km/hであった.衝撃加速度の最大値は,コンクリートへの衝突では88.6g,鉄で78.4g,木材で74.8-78.3gであった.衝撃加速度の持続時間は,コンクリートで8.5ms,鉄で9.0ms,木材で9.5msであった. 2.実際の頭部外傷剖検例における脳の神経病理学的検査 打撲,転落(転倒),交通事故における頭部外傷剖検例の脳を10%ホルマリンにて固定後,前額断を施し所見を肉眼的に検査し,脳の各部(脳梁,脳幹部,頭頂葉白質など)から組織片を切り出して組織学的に検査した.打撲,転落(転倒)事故で頭部を硬い物体で打撃した症例では,ほとんどの例で顕著な脳挫傷を生じていた.交通事故で頭部を車輛のボンネットやフロントガラスで打撃した例ではDAIを,頭部をピラ-で打撃した例では脳挫傷を生じていた.
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