研究概要 |
【目的】アドリアマイシン(Adr)によって発現が抑制される因子として発見された心筋特異的核蛋白のCARPは、心臓の発生、分化に重要な因子であると推定されている。本研究では、CARPの機能を明らか人するために、種々の病態生理的刺激によるCARPの発現変化を検討した。【方法】新生児ラット培養心筋細胞を用いて、炎症性サイトカイン、リポ多糖類,IMX,TGFb,アンジオテンシンII,低酸素による刺激を加え、ノーザンブロットによるCARPの発現を検討した。ラット腹部大動脈の縮窄により、心圧負荷モデルを作成し、8日後に屠殺し心臓RNAをノーザンブロットにより解析した。家兎にアドリアマイシンを静脈注射することにより、慢性アドリアマイシン心筋症モデルを作成し、カ月後にRNAを抽出し、CARPの発現を解析した。また、ラット腹腔内にLPS(5mg,10mg)を注入し、5時間後に肺、心臓および腎臓のRNAを抽出し、CARP,Ca-ARTPase,BNPの発現を検討した。さらに、ラットの発生過程におけるCARPの発現を検討した。【結果】新生児ラット培養心筋細胞において、LPS刺激(10mg/ml)、低酸素刺激はCARPの発現を抑制した。一方、これらの刺激はANP,BNPの発現を軽度に抑制したのみであった。持続的圧負荷によりCARPの発現は著明に増加した。また、5mgのLPSをラット腹腔内に投与することにより、CARPの発現は明らかに増加したが、10mgのLPS投与では逆に減少した。Ca-ATPaseはLPSの用量依存性に減少し、iNOSは5mg、10mgLPS投与で同程度に誘導された。ラットの発生過程で、CARPの発現は胎児期から、新生児、adultに至まで、明らかに増加した。【総括】CARPの発現は、LPS、低酸素、圧負荷など細胞外からの種々のストレスにより明らかに変化した。持続圧負荷における核内因子CARPの発現は、CARPが慢性圧負荷心筋の病態形成に関与している可能性がある。
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