研究概要 |
本研究では,光硬化型グラスアイオノマーセメントの象牙質接着性を向上させる研究の一環として,専用のデンティンプライマーを開発するために,接着性を向上させるに有効であると考えられる組成のデンティンプライマーを試作し,これらの含有率を変え象牙質接着強さ,接合面や接合界面の電顕的観察および接着耐久性試験から検討し,以下の結論を得た。 1.試作デンティンプライマーに用いる機能性モノマーとしては,カルボン酸系モノマーに比較してリン酸エステル系モノマーが,象牙質接着強さを向上させた。とくにその接着効果は,EPHにおいて最も高くなる傾向を示した。 2.試作デンティンプライマーの組成の至適含有率としてはBis-MEP 5 wt%,EtOH 20 wt%,およびHEMA 35 wt%であり,製造者指示のデンティンコンディショナ-処理よりも明らかに大きな象牙質接着強さが認められた。 3.試作デンティンプライマーを用いた接着試片の試験後の接合界面の電顕的観察では,光レジンにおけるハイブリッド層と同様に、セメントマトリックス含浸層様の含浸層が認められ,それらの試験片では象牙質の凝集破壊例が一部に認められた。 4.試作デンティンプライマーを用いた接着耐久性試験では,対照として用いた光レジンよる接着安定性に優れる成績を示した。 以上の結果から専用のデンティンプライマーを製作,使用することによって光セメントの象牙質接着性の向上が可能であることが示唆された。また,デンティンプライマーはボンディング材のように層状構造物を接着界面に形成するはないことから,セメントから徐放されるフッ素の歯質取り込みを阻害することはないものと考えられた。
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