研究課題/領域番号 |
08558005
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 展開研究 |
研究分野 |
体育学
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
征矢 英昭 三重大学, 教育学部, 助教授 (50221346)
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研究分担者 |
中瀬 真治 三重大学, 医学部・附属病院, 助手 (60273372)
浜中 健二 三重大学, 医学部・附属病院, 助手 (70242956)
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研究期間 (年度) |
1996 – 1997
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研究課題ステータス |
完了 (1997年度)
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配分額 *注記 |
5,600千円 (直接経費: 5,600千円)
1997年度: 2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
1996年度: 3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
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キーワード | 走運動 / 乳酸性作業閾値 / c-fos mRNA / c-fos蛋白 / in situ hybridization / 脳 / 視床下部 / ラット / 筋収縮 / c-fos発現 / 免疫組織化学 / アルギニン・バソプレッシン(AVP) / 脳幹 / 中枢神経活動 / in situ hybridyzation法 / マッピング |
研究概要 |
本研究は神経科学研究分野で頻繁に用いられているc-fos原癌遺伝子または、あるいはその蛋白発現をin situ hybridization(ISH)法あるいは、免疫組織化学的手法により実験動物(ラット)の脳切片上で視覚的に同定する方法を利用し、走運動に関与する中枢神経部位を同定することを目的としている。昨年(平成7年度)は、ラットの走運動モデルを用い、主に乳酸性作業閾値(LT)に相当する走速度で検討した。平成8年度は麻酔下の雄ラットを用い、座骨神経を刺激し、筋収縮を惹起させた際の、中枢におけるc-fos発現部位について検討した。 平成7年度は、ラットにLT(乳酸性作業閾値)を越える強度で走らせ(30分)、その前後で、脳の凍結前額断切片を作製し、c-fos mRNAを視覚化するISH法を用いて、脳切片上に発現するc-fos mRNAの部位を同定した。特に、発現が運動の時間経緯とともに増加し、終了とともに消失した視床下部室傍核(PVN)においては、画像解析による半定量を行った。その結果、PVNでは運動後15分でc-fos mRNAの発現がピークとなり、運動中それが維持されること。さらに、運動後は時間とともに漸減するといった傾向が認められた。視床下部では、運動後30分に視索上核(SON)でも増加が見られたが腹内側核(VMH)や視床下部外側核(LH)では変化はほとんど認められなかった。視床下部以外では、大脳頭頂領域(下肢筋支配部位)、視床、基底核、海馬(歯状回やアンモン核)、脳弓下器官などで発現増加が認められた。 平成8年度は、麻酔下においてラットの座骨神経を電気刺激し、それにより惹起される筋収縮により、脳のどの部位でc-fos蛋白が発現するかについて、免疫組織化学的なc-fos蛋白同定法を用いて検討した。その結果、麻酔したラットで筋収縮を起こさせた後でも、PVNやSONの神経群にc-fos遺伝子発現が増加することが判明した。その他、視床や大脳基底核など、運動の企画などに関係する部位も染色された。認知に関する海馬などの辺縁系や運動の実行指令に関わる大脳皮質については、c-fosの発現はほとんど認められなかった。これは麻酔の影響かもしれない。PVNに発現したc-fosについてAVPニューロンとの共存を調べてみると、明らかにAVPニューロンの核にc-fos蛋白の発現(核は黒、細胞質は茶褐色)が認められ、筋収縮に伴い視床下部室傍核のAVPニューロンが興奮することが示唆された。視床下部に投射する脳幹についても検討を加えたところ、弧束核や青班核、あるいは、網様体などにc-fosの発現がみられた。ノルアドレナリン系神経の興奮とそれによる視床下部の興奮が筋収縮に伴い生じる可能性が示唆された。 最後に、下肢筋を支配する脊髄運動ニューロンにおいて、c-fos mRNA発現の有無から検討した。その結果、LTを境とする運動強度(速度)の変化に伴い、遅筋タイプのヒラメ筋の動員はほとんど変化を示さないのに対して、速筋型の足底筋では速度変化を反映させる動員が認められ、脊髄運動ニューロンの動員を探る方法としての有用性が示唆された。
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