| 研究概要 |
本研究は、固体NMR法による生体高分子における特定部位の炭素-炭素,炭素-窒素核間距離,および二面角φ,ψの精密かつ信頼性の高い測定法を開発し,さらにその有効性を示すためにX線回析および溶液NMRでは未解決の構造生物学上の問題に適用することを目的としている.
今年度は、これまでに開発した各種方法を発展させるとともに、SSI(streptomyces substilisin inhibitor)-ズブチリシン複合体に適用し、SSIの阻害機構を解明するうえできわめて重要な構造情報を取得した.
1.これまでに開発したMLEV-4,4′法,MLEV8/8^R法,RACO法,R2TR法を発展させ,完成させた.
2.高周波磁場の振幅,位相,周波数を変調することにより,内部ハミルトニアンを操作する方法論の理論的基礎を構築した.さらに,この理論を適用することにより高速MAS下において化学シフト異方性や^<13>C^<-15>N双極子相互作用による粉末スペクトルを観測する方法を開発し,実験に成功した.
3.格子振動がX線回析および固体NMRによる距離測定および角度測定に及ぼす効果の差異を理論的に詳細に検討した.
4.SSIの被切断結合の炭素・窒素核を選択的に^<13>・^<15>Nで標識したSSI-ズブチリシン複合体を準備した.
5.前項での標識試料を用いて炭素-窒素核間距離を精密に測定し,標識部位の正確な構造情報を得た.
6.得られた結果とX線回析で決められた構造との対比を検討し,得られた結果からSSIの阻害機構について考察を行った.
|
