研究概要 |
マルチセンサ方式を導入し,2波長近赤外分光法を用いた携帯型組織酸素モニタを開発し,その実用性を確認した.本酸素モニタでは,筋代謝動態を無拘束,実時間で定量計測可能であり,筋生理学,スポーツ・リハビリテーション医学の分野に有用な評価手段となる.本研究の主要な成果を以下にまとめる. ・ 携帯型組織酸素モニタの開発:携帯可能な小型の装置とするために光源として発光ダイオードを採用し,送受光器間隔が20,30,40mmのマルチセンサ方式の組織酸素モニタを試作し,光拡散理論に基づく反射光強度の理論式と筋組織を模擬したファントム実験により算出アルゴリズムを決定した. ・ 皮下脂肪,皮膚の影響の補正:筋組織酸素計測に及ぼす皮下脂肪層の影響をモンテカルロシミュレーション,実測,ファントム実験の3種の方法で系統的に解析し,脂肪層の影響の補正法を確立した.また、皮膚および皮膚血流の影響補正について検討し,送光器から3mmの位置に設置した近接受光器により,皮膚および皮膚血流の影響が除去可能であることを見い出した. ・ 近赤外組織酸素モニタの有用性確認:実用性確認のためにノルディック複合オリンピック候補選手の筋組織酸素供給能力を測定し,一流選手の酸素供給能が一般成人と比較して明らかに高いことを定量化できた. ・ 生体組織の光学特性の計測:酸素濃度変化の絶対量計測のための基礎的データとして,ストリークカメラを用いた時間分解測定を前腕で実施し,脂肪層の影響を含まない筋組織のみの光学特性を決定した.
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