研究課題/領域番号 |
08610007
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
哲学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
信原 幸弘 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (10180770)
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研究期間 (年度) |
1996 – 1997
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研究課題ステータス |
完了 (1997年度)
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配分額 *注記 |
1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
1997年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
1996年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 心の自然化 / 目的論的機能主義 / 志向性 / 意識 / 命題的態度 / 合理性 / 行為の因果説 / 感覚質 / 無意識 / ニューラルネットワーク / 並列分散処理 / 記号計算 |
研究概要 |
心は環境に対する主体の適応を促進するための装置であるという目的論的機能主義の立場から、心の自然化を試みた。とくに志向性と意識の自然化をめぐる諸問題の解決を目指した。その結果、以下のような成果が得られた。 1.信念や欲求のような命題的態度とよばれる心的状態は構文論的構造をもち、論理的な推論に従う点に特色がある。しかし、コネクショニズムによれば、脳状態はそのような構文論的構造をもたず、力学的なパターン変換に従う。このことから、命題的態度は個別に脳状態に対応せず、たかだか全体論的に対応するにすぎないことが言える。ただし、意識的な命題的態度に関しては、発話ないし脳の運動中枢の興奮パターンとして個別的に実現されていると考えられる。 2.命題的態度は合理性に従うことをその本質とする。そして合理性は一群の規則として体系化できないという意味で非法則的である。従って、命題的態度の目的論的機能は非法則的な合理的機能ということになる。このことから、行為の理由となる信念と欲求は必ずしもその行為の原因とは言えないという、行為の反因果説を支持する論拠が得られる。しかし、このような反因果説につながる非法則的な合理的機能はコネクショニズム的なメカニズムによって実現可能であり、けっして自然化不可能な機能ではない。 3.知覚や感覚のような意識的な心的状態はそれに特有の感覚的な質を備えているが、この感覚質は意識的な心的状態の内在的な性質ではなく、その志向的内容に属する性質であると考えられる。このことから、痛みの経験のようなふつう非志向的と解される心的状態も実は志向的であり、痛いという性質は身体の客観的な性質であると考え直す必要が出てくるが、そのような再解釈は十分可能である。
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