研究概要 |
本研究にあたり基本文献として、1.Abhidarmakosa-vrtti-marma-pradipa. 2.Dam pa'i chos mngan pa mdzod kyi dgongs 'grel gyi bstan bcos thub bstan nor bu'i gter mdzod dus gsum rgyal ba'i bzhed don kun gsal.の2論を選定し研究を進めた。 このうち、前者はインドにおける仏教論理学の確立者ディグナーガ(Dignaga,A.D.480-540)の手になるものであり、後者は上述の『倶舎論註』である。共にアビダルマ仏教のチベット受容・継承に関しては看過されえぬ重要な典籍である。しかしながら、本研究に至るまで校訂・翻訳等の成果は公表されていなかった。 故にわれわれは、本研究を、この二典籍を基本資料として以下の計画のもとに遂行した。 1, 校訂(Varlantの摘出と定本の確定)・データベース化 2, 翻訳(特に1.の論書に対しては還元Sanskrltの想定) 3, 「定義集」の作成 上記の研究中、1に関してはコンピューター使用の至便を考慮して、北村・Wylie方式とAsiun Classic Input Project方式の折衷案である福田洋一氏の方法(cf.コンピューター処理を考慮したチベット語転写法の試案、日本西蔵学会会報38.1992.pp.23-24)を採用し、2並びに特に3に対しては、サンスクリットや漢訳も含めた複数のアビダルマ文献を参照した。 以上の行程のもと、資料の正確な判読、有部数学の「定義集」に基づき、幾つかの新知見を発表したが、有部数学の整理は膨大な時間を必要とし、さらに詳細な検討を行わなければならず、研究を続行するものである。
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