研究概要 |
本研究は,平成8年度から10年度まで三年間にわたり実施してきた.以下に各年度ごとの研究経過を示す。 まず初年度は,国内・外の先行研究をレヴューしながら,学校組織研究の社会心理学的アプローチの意義と有用性についていくつかの論文のと著書にまとめた。また学校改善を目的としたある小学校を対象として,そこでの校長と教師のコミュニケーションを取り上げて,改善前と改善後における両者のコミュニケーションの量的・質的変化を実証的に検討した。その結果改善前より改善後において,両者のコミュニケーションがより開かれた生産的なものへと変化していることが明らかになった。 次年度は,集団内における葛藤関係とコミュニケーションについて,より詳細に検討するために実験的研究を行った。まず葛藤関係を目標の対立による目標型葛藤と課題の対立による課題志向型葛藤に分類し,成員同士のコミュニケーションを分析した。その結果,葛藤のタイプによっては,集団決定に異なる機能をもたらすことが示唆され,集団における葛藤関係は,ネガティブな影響のみをもたらすものではないことが明らかになった。 最終年度は,鹿児島県と大阪府の教師と校長を対象として,学校組織内における影響行動認知に関わる調査研究を実施した。その結果,単に校長のみが突出して影響力を行使するだけでなく,彼らの影響力が教師集団に十分浸透しないと効果が望めないことが明らかになり,校長と教頭も含めた他の教師との日頃の相互作用が極めて重要であることが示唆された。本研究の結果は,平成11年度の日本教育経営学会,日本教育心理学会,日本グループダイナミックス学会において,詳細に報告する予定である。 最後に,これまで三年間実施してきた研究成果を研究成果報告書としてまとめた。
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