研究課題/領域番号 |
08610152
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
教育・社会系心理学
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
野村 幸正 関西大学, 文学部, 教授 (30113137)
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研究期間 (年度) |
1996 – 1997
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研究課題ステータス |
完了 (1997年度)
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配分額 *注記 |
1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
1997年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
1996年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
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キーワード | 想起 / 心理学的知識 / 実証的研究 / 素朴理論 / 統合と分化 / 自伝的記憶 / 共同想起 / 自己 / 心の理論 / 女性 / 自己知 / 努力度 / 運度 / 因果律 / Locus尺度 |
研究概要 |
本研究の目的は、自伝的記憶の想起事態において、想起された内容が想起する主体にとって一体どのような意味をもち、また、それが状況の変化にともなってどのように変わってゆくか、ということを明らかにすることであった。さらに、想起する自己の構築過程に心理学の知識がどの程度関与しているのか、その自己の構築過程を素朴理論といった観点から明らかにしようとしたものである。これらの目的は、しかしながら、従来の心理学研究で用いられてきた実証的手法では充分に遂行しえない。そこで、それに代わる新しい手法が求められる。それが本研究で独自に提唱する「想起的統合と分化」による手法である。この手法では、調査者(聞き手)と対象者(話し手)は共同想起事態を共有し、聞き手は話し手の自伝的記憶の想起事態に潜入し、そこに身を委ね、しかも聞き手は自らの身体レベルで感じ取った世界を自らの言葉で記述してゆかなければならない。したがって、この事態で想起された事象は単に話し手の想起ではなく、話し手と聞き手の共同創作であると言ってもよいものである。 3名の対象者が、調査者との共同想起を通して、自伝的記憶を半年ごとに三回にわたっておなじテーマで想起を繰り返した。想起された事象は「想起的統合と分化」の手法によって、調査者によって克明に記述され、しかもそれが再構成されていった。その結果の概要は次のようなものである。(1)対象者が過去に経験した事象は変化しなかったが、過去の事象に対する主観的な経験は変化していった。(2)想起の途中で、対象者は自己の性格特性を延べ、それに自己の行為を帰属させる傾向があった。(3)心理学の知識は対象者の素朴理論のなかに取り込まれ、状況知識として働いたことが認められた。これらの結果を踏まえて、さらに自己についての素朴理論の抱える問題点、今後の研究の方向性が示唆された。
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