研究概要 |
平成6,7年度に看護短大3年生だった者にBowlbyの内的作業モデル(以下IWMと略)に関する質問紙調査と生育史の記述を求めたが、その201名に対しその2年後である平成8,9年に同じ質問紙調査を行い、134名からの解答を得た。質問紙調査は1)IWMの安定、不安、回避項目(Hazan & Shaver一戸田に基づく)、2)エゴグラム、3)過去から現在の5(6)つの時期の適応感、4)両親の養育態度の認知について3〜5件法で答えるもの、生育史は乳幼児期から現在を4つの時期に分け、どのような時期だったか、どんなことがあったか、誰がどのような意味で重要だったかについて自由に記述させた。主な結果は次の通り。1)現在の対人的枠組み(IWM)が安定しているか否かはエゴグラムと関係しており、また過去から現在の対人的経験のあり方を表す各時期の適応感(特に現在)や両親の養育態度の認知との関連も見られた。2)2年間の変化に関しては、IWMの不安得点が減少、回避得点が上昇していたが、2時点の得点間の相関はどの変数でも.4台から.7台で安定性は比較的高く、またIWMと他の変数との関連も2時点間での差は少なかった。3)生育史を細かく分析し、過去から現在の母親のとらえ方を検討したところ、母親のとらえ方は発達と共に変化するが、幼・児童期の母親との関係の良好性や問題性と中・高校時代のそれとは関連している場合が多かった。4)現在の対人的枠組み(質問紙でのIWM)での安定性の程度は、生育史に見られる母親及び友人との安定した愛着及び回避的な関係と関連しており、特に不安定群は生育の過程に問題がある者が多いことが示された。
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