研究概要 |
本研究の3年計画では、まず(1)公募制の理論的分析枠組みを構築すること。(2)公募文書の分析により,公募文書の内容・形態・価値観等を解明する。それによって日本的公募のエートスを分析する。(3)公募文書によって出身校からみてどのような人材がリクルートされているか公募文書と職員録の比較によって追跡調査を試みる。 上記の調査結果として次のような結論を得た。 I. 公募制の理論的枠組みの分析では,公募制の成立基盤としてディシプリン、大学教授市場、大学組織のあり方が公募制を考えていく上で重要な視点として定義しつつ、指名制と公募制のメリットとデメリットとを比較した。それによってそれぞれ長短のあることが明確となり、状況に応じて判断する必要があると思われる。長い目で見れば公募制の普及において色々な条件整備をする必要がある。 II. 公募文書の分析では、研究業績中心主義、年齢中心主義の傾向が濃厚であることが証明された。国籍や性差に対する公開制や平等性には問題があり、依然としてマイノリティには厳しい現実がある。公募のサイクルに関する時間的周期は職階によって大きく相違した。教授の場合には前期と後期の二つのピークがあった。それに対して助手層は後期にピークがあった。 III. 公募文書によって出身校から見たリクルートや職階及び地域などから見たリクルートについて分析した。芸術関係や伝統的な教員養成大学の出身者の占める割合は依然として高いが、急激に低下しつつあることが理解された。それとリクルートされた教員が過去20年間に高齢化・高職階化しつつあることが分かった。この背景には明らかに大学院の設置に伴う人材確保の問題があることが理解された。 以上の成果報告については冊子を参照されたい。今後さらに大学組織における公募制の普及、公募制の手続き及び学術情報センター等の資料をさらに分析する必要がある。これらを加えて出版を計画したい。
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