研究概要 |
(1)アメリカでの観察調査データのエスノグラフィー的分析-アメリカの観察調査地域の小・中学校で収録したビデオテープから、主に授業場面での教師の指示や教師と子どもとの相互作用を集約したテープを編集し、そのテープに録音されている会話を聞き取って文章化する作業(transcriptionの作成)を行った。さらにこのtranscriptionのうち、教師が子どもの道徳的社会化に関与する行動表現を見せた場面を抽出し、日本語にも翻訳して、如何なるコンテキストからそのような行動が出現し、どんな社会化効果を持つのかを分析した。カメラやビデオの映像を静止画入力して、上記transcriptionと組み合わせた合成画面をマルチメディア・ファイリングソフトでデータベース化する試みも行ったが、国際的に通用するソフトが未だ開発されていないこともあって、外国の研究者との間で広くレヴュ-を受けるにはその汎用性および可搬性に課題を残した。 (2)質問紙調査法と観察調査法との統合的調査方法の検討-質問紙調査を統計的に分析処理した結果は、Tsunenobu Ban,"Influential Factors on Moral Behavior of Japanese and American Children"in Patterns of Value Socialization in US Primary Schools-A Comparative Study,Osaka University,1997.Tsunenobu Ban and William Cummings,"Moral Orientations and Behavior of Children in the U.S.and Japan",Comparative Education Review(予定)等で成果を公表した。質問紙調査で捉えた日米の子どもの道徳的行動に関するマクロな実態の背後要因に、教師の社会化作用という視点から具体的な授業場面に即したエスノグラフィー的分析により一部実証的に迫ることが可能になった。
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