研究概要 |
2ヶ年にわたる本研究プロジェクト実施の結果,以下の諸点について予定の進捗をみた。 1.本年度は,とくに政治家,知識人による民主主義をめぐる言説のあり方について,文献資料収集と研究討議(本学で3回,東京で2回)を行った。 2.日本を含むアジア・太平洋諸社会のうち,スリ・ランカ,フィリピン,ハワイ,マレーシア,シンガポール等の諸社会で,民主主義がどのように捉えられ,理解されているのか,民主主義の言説のあり方についての基礎資料の収集が円滑に行われた。こうした資料はこれまで集中的に検討の対象となったことは殆どなく,今後の研究展開に資すると期待している。 3.民主主義の問題はこれまで政治学の専門領域として研究されてきたが,今日情報化とグローバル化のなかで,民主主義が文化・社会環境を異にする非西欧社会にどう根付くかが大きな論議を呼んでいる。その点本研究が着目した,文化的側面からの検討は,民主主義が文化の境界を越えて,間文化的なシステムとして拡がりゆくための,諸条件および個別文化との関わりについて,より総合的な視点を構築する手がかりを得た。 4.もとより民主主義の本格的な研究は超領域的に行う必要がる。本研究プロジェクトの実施によって国内・外の他分野の研究者との協力体制が緒に着いたことも成果のひとつである。 5.蓄積された研究資料のさらなる分析と検討については現在進行中であり,国外の研究協力者の参加も得て,1998年6月に「アジアにおける文化と民主主義」シンポジウム(於札幌)を計画中である。
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