本研究により得られた成果は、次の通りである。 1.ベトナムと中国の史料により、ベトナム法の生成・発展過程において民族意識が表出されていることを具体的に考察し、ベトナム民族史の新しい側面を浮きこ彫りにすることができた。、 2.ベトナム前近代の諸文献にみえる法制用語を吟味・検討し、すでに作成済みの「国朝刑律(黎朝刑律)」語彙葉とともに、ベトナムと中国の比較的考察を進め、ベトナム独自の意味と用法を究明した。 3.「国朝刑律」の構成上の特徴を考察した結果、そのなかに北国の中国を強く意識した民族的性格が色濃く反映していることを明らかにした。 4.「国朝刑律」の条文とその内容を分析し、中国法文化圏のなかでベトナム法が、もっとも民族的意識の濃厚な法であったことを確認した。外国や国境にかかわる規定が数多く収められており、ことのほか、外国を強く意識していた。 6.「国朝刑律」の索引原稿も、本研究とともに進め、ほぼ完成の域に到達した。 以上、従来の研究ではほとんど取り上げられなかったベトナム法における民族意識の問題に一定の成果をあげることができ、その概要は別冊の報告書にまとめた。
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