居延新簡と敦煌漢簡のカード化を行った。また、書式・筆跡から、文書作成・伝達・保管の検討、さらに古代史上の諸問題の考察も行った。その結果、明らかになったことは以下の通りである。 I 文書作成・保管及び印・検について (1) 候恩冊書の筆記者は三人。最初の爰書は候官でのコピー、第二回目の爰書はオリジナルである。冊書はそれらを送り状とともに一つに綴じて付け札を付けて保管したものであった。 (2) 上級官庁から来た文書を下級官庁に送達する際は、上級官庁から来た文書のあとに、下達する文書の控をつけて編綴し、保管したと考えられる。 (3) 正式文書には両行(二行書きの簡)、控文書には札(一行書き)が用いられる傾向がある。両行は文字数を増やすためだけに用いられたのではない。簡牘の形状はその目的や内容によって使い分けがあった。 (4) 文書簡の裏に印文・文書の到着日・送達人の名が書いてあるのは、封検を用いず、封泥を簡上に直接おしたと考えられる。また文書簡の裏がそのまま検の役割を果たすこともあった。 II 贖刑について (1) 秦では、換刑としての贖刑と換刑でなくしかも酌量の意味をもたない贖刑の二つがあり、いずれも法定刑であった。漢以後は後者はみられなくなる。 III 衣料生産について (1) 衣料生産は主に女性の仕事であった。衣料は原則自給で、自給できることが一人前の人間の条件であった。
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