研究概要 |
前年度科研費調査結果をうけ、新潟県岩船郡山北町大字堀之内にある上山(うえのやま)遺跡の発掘調査を9月4日から16日までの日程で、遺跡内の3地点で実施し、次のような成果を得た。なお、発掘に当たっては明治大学大学院生・学部学生の協力を得た。 成果1:遺跡内の高まり部で、1968年・1994年の各1基に加えて新たに竪穴住居1基を検出した。谷部の包含層は生活残滓の投棄場とみられるので、縄文後期後半の集落景観のある程度の復元が可能となった。 成果2:包含層で縄文後期後半〜晩期初頭の資料群を層位的に検出した。つまり、IIIc層=瘤付土器1段階,IIb2層=瘤付土器2段階(多)・3段階(少)・IIb1層=瘤付土器2段階(少)・3段階(多),IIa層=大洞B1式(多)・瘤付土器各段階(少)・大洞C1式(少)。仙台湾沿岸以外での層位的検出は初例であり仙台湾地域の成果を追認できた。また昨年、北陸で従来晩期初頭とされてきた八日市新保2式土器が検出されているから、これが瘤付土器2〜3段階に併行することがひとつの遺跡で確認できた点は重要である。 成果3:今回の調査で1965・66年調査区が確定し、国指定重要文化財の巻貝形土製品・足形付土製品のみ独り歩きし、具体的内容が明らかでなかった上山遺跡の内容が統一的に把握できるようになった。 成果4:住居・土器・土製品・土偶・石器など遺物・遺構の分析から、瘤付土器段階がまさしく縄文晩期亀ケ岡文化の形成過程であることがよく理解できる。 なお、発掘データ・資料の整理・分析はなお中途であり、今後精力的に推進する。
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