研究課題/領域番号 |
08610471
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
英語・英米文学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高橋 和久 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (10108102)
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研究期間 (年度) |
1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
1996年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
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キーワード | ジェイムズ・ホッグ / スコットランド啓蒙主義 / 自己劇化 |
研究概要 |
18世紀後半から19世紀初頭にかけてエディンバラを中心に花開いたスコットランド啓蒙主義の都会性を背景に考えたとき、「エトリックの羊飼い」と呼ばれた牧羊詩人ジェイムズ・ホッグは、スコットランドの土着性を体現することによって、都会趣味と著しい対照を成すと考えられる。The Blackwood's Magazineに連載された『アムブローズ館夜話』で造型された大酒のみで、服装や礼儀に頓着しない「羊飼い」像は、まさしくその典型例として読める。(後にロックハートが記した『ウォルター・スコット伝』において表象されたホッグ像もそれを強化している。)しかし同時に、ホッグ自身の自伝を調べてみると、ホッグ自身が、都会趣味とどのように向き合うかについて、相当程度意識的な自己劇化を図っていたことが理解される。彼の発行したThe Spyという雑誌がエディンバラの読者に受け容れられなかったことは、そこでの露骨な性描写が一因であったようだが、それをすべて作者の非都会性なり、無教養に帰することはできず、The Fraser's Magazineなどに正体を隠して投稿した記事などを参照すると、都会文化との齟齬を自覚しながらそれを逆手にとって、あえて「奇人」を振舞うというソフィスティケーションを身につけた詩人の姿が浮かび上がる。これはポストモダニズム批評が展開する作家像に思いのほか近づいていると考えられる。 今後の課題は、19世紀の雑誌のコピーが必ずしも鮮明でないために、コンピュータ処理が思うように行かず、予定したテクスト分析がまだ残ったことである。
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