研究課題/領域番号 |
08610473
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
英語・英米文学
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
清水 徹郎 お茶の水女子大学, 文教育学部, 助教授 (60235653)
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研究期間 (年度) |
1996 – 1998
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研究課題ステータス |
完了 (1998年度)
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配分額 *注記 |
2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
1998年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
1997年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
1996年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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キーワード | シェイクスピア / マーロウ / オウィディウス / マ-ロウ |
研究概要 |
1580年代から1590年代の英国文学には、古代ローマの恋愛詩人オウィディウスの影響が顕著であった。翻訳に始まり、小叙事詩エピリオンの流行を経て、オウィディウス的イメジャリーはエリザベス朝の詩と演劇にさかんに用いられた。本研究は、16世紀末英国における、このようなオウィディウスの流行の意味を探ることを目的とし、クリストファー・マーロウ(1564-1593)とシェイクスピア(1564-1616)のテクストを中心に検証を試みたものである。研究代表者による「古典文学の翻訳....マーロウ訳『オヴィッド全エレジー』とその周辺」(1997)は、マーロウがオウィディウスのラテン語の詩を英語に翻訳するという作業を通して、英語独自の詩形とレトリックを確立していったことを論証したものである。「暁とヒアロウの紅潮と....悲劇のコズモロジーとしてのオヴィディアニズム」(1998)および「ジョーヴの高空と緑の野....マーロウの劇場的宇宙」(1999)は、16世紀末英国に出現した新しい型の大衆劇場にふさわしいような悲劇の創造を手掛けていたマーロウや若い頃のシェイクスピアが、演劇的宇宙像としてオウィディウスの恋愛詩や叙事詩のイメジャリーを応用したという事実を論じたものである。宗教、政治あるいは世界観において、エリザベス朝の演劇状況は古代ギリシア悲劇の演劇状況とまったく違った。マーロウらが試みたのは、虚構の詩的・異教的宇宙像を用いて独自の演劇空間というイメージを生み出すことであったと推測される。オウィディウス詩の特徴であるところの、不条理な神々の支配する異教神話と官能性と巧妙なレトリックの遊びとが、大衆劇場という演劇の場において、新しい感性による自由な芸術的表現を可能にする上で、戦略的にきわめて有効であることをマーロウらが発見したと言える。かくしてオヴィディアニズムは、詩や演劇が宗教と政治の支配から独立していく過程に、一時的な現象として現れたのである。
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