研究概要 |
上記研究課題に関して平成8年度と平成9年度に行った研究実績を述べる。 平成8年度は、各種設備備品を購入し、35mm図像フィルムをデータベース化するまでの処理システム構築を行い、海外から図像フィルムを郵便にて取り寄せスキャナからMOへのデータ入力・保存を行った。海外における図像の所在、写本番号等に関しては、数種の研究書や以前から書き留めておいたメモ帳からParadiseやHellに関するgate,river,treeなどに分けてコンピュータに入力し利用した。また、インターネットに接続することにより海外の大学図書館や美術館等ヘアクセスし貴重なデ-夕を入手することもできた。異界を構成する要素分類に関しては、主にH. R.PatchやAlison Morganの論述をもとにして、Paradise, Hell.Purgatory別に文献上の顕著な異界要素を中心に再構築した。 9年度は、35mm図像フィルム収集、データ入力・調査を維続して行い、上記一覧表と図像との比較検討を試みた。この比較検討により文献学的には調査が及ばない視覚芸術的特質が明瞭になった。そして、研究成果のまとめとして、勤務校の研究紀要において研究成果論文を作成し、更に、日本中世英語英文学会(13回全国大会)では「霊的世界(煉獄・地獄・天界)におけるtopographical motifsにについて」と題する口頭発表を行った。 2年間の研究は、中世庶民のみならず人間全般の死生観、宇宙観等に関する深層心理探求への指針となり極めて有意義な研究であった。ただ、異界要素の文献学的一覧表はできたが図像に関する一覧表作成までに至らなかった。今後も同じテーマでの研究を継続して行い知見を更に広げ、科学研究費の申請、出版費の請求等を行うつもりである。
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