研究概要 |
中世フランス文学が「静」の側面、「宮廷/宮廷風恋愛文学」として把握され「動性」の側面が無視されてきた事を指摘、全体像を歪みなく再構築する事を意図した。1)(1)舟(航行)、(2)道(騎行)の両面より迫り、地上の移動および想像界へと試みられた旅、2)〈知〉の伝承を踏まえた旅を考究範囲とした。そのどちらも経験とみられる実録的要素はほぼ欠落する。『アーサー王の死』、『聖杯の探索』、13世紀のラテン文献を主として分析,ケルト系とくに12世紀に書かれた「物語」に比し「彼岸」から「此岸」への志向が当時の埋葬への関心に連動している事を結論(自害したエスカロの少女の舟のロマンチスムーーー現代的思考の枠組ーーーの遺棄)、死者と死出の旅、死の航行のモチーフ化への過程が論究された1),(1)。「失楽園」直後の聖地への移動、「地上の楽園」が東西に設置されて地理外空間へと向かう旅2)、それが重複から喪失に向かい、「大航海時代」に至る1),(1),(2)。『散文トリスタン物語』後半部では両ブルターニュ間に主要登場人物間の距離の設定が逆説的に緊密化に向かい、「動性」に伴う連絡と伝達のオブジェ印章、指輪、犬がその交流のカナメとなる1)(1)。主人公の「騎行」、「探索」と平行する移動形態「狩猟」が同「物語」に初めて導入される事を指摘し、「複合獣」狩猟がパラメードに課せられ、「聖杯の探索」のネガとなっていることを結論1)(1),(2)。最果てを劃す柱〔ボーヌ・アルチュ)樹木(アルブル・ソル)が〈知〉の問題を内包して、〈知〉と〈動性〉の相関関係をポーロ、マンドヴイルで2)、あわせて旅の実行者と記述者の視点と異文化を、またクレチアンをもって顕現した「放浪の騎士」(往来)と樹木(佇立)の関係の把握を試みた1)(2)。
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