研究概要 |
1.平成7〜9年度の北海道大学の初習ドイツ語教育において,日本人教員と外国人教員がドイツで発行された教科書を用い,共同で準備をしながら授業を行った。この「実験授業」の目的は,コミュニカティヴ・メソッドが,現行の「一般教養科目」という制約や文化的背景,学習者に固有の傾向といった諸条件にもかかわらず日本でも採り入れられるかどうか,修正すべき点があるとすればそれは何かを研究することである。2.各学期の最後に読む・聞く・書く試験を行い,所与の条件でどこまで能力を伸ばせたかを概観することができた。同時に同じテストを「伝統的」方法で学ぶクラスでも行い,方法の違いが学習者の能力の進展にどのような影響を及ぼすかも考察の対象に加えるよう試みた。第1学期終了後の作文の結果を比較すると,実験クラスの学生は同じ試験時間でもはるかに長く,内容豊かでかつ文相互の結束性が高く,逆に文法的誤りの少ないテクストを書いている。能動的に使える語彙や文パターンのまとまったレパートリーが授業を通して既にかなり身についており,書く速さや構想の広がりにも影響を与えたためと考えられる。まだ授業を収録してヴィデオでは,パートナー練習に取り組む参加者の積極的姿勢が見て取れる。3.日本人教員も外国人教員も自分の学習経験に強い影響を受けており,これを教育の場でもくり返す傾向が見られる。したがって緊密なパートナー授業のためには,初めの準備段階で忍耐力と妥協が必要とされるが,ひとたび基本的なコンセンサスができれば両者は互いの能力を補いあうことができる。(「報告書」にまとめきれなかった点は今後順次発表する予定である。)
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