本研究においては、平成8年度の実績を踏まえ下記の2点において標記研究を遂行した。 1)宮古島平良市における言語意識の研究 2)宮古諸島北部の言語的ヴァリエーションの研究 1)においては、平成8年度に遂行した平良における宮古方言・沖縄方言・本土方言に関するイメージ調査の結果を、昨年度の臨地調査により得られた知見を加えて、通信による第2次的調査を行った。この調査によって得られたデータを、大野・外間『ウチナ-グチ(沖縄方言)に対する意識調査報告書』(平成7年)で既に報告済みの那覇市におけるデータとつきあわせ、沖縄県の周辺地域としての宮古島の言語意識と県内の中心地としての那覇市の言語意識とを対比的に分析した。この結果、那覇市では在来の方言と共通語との間で生成された中間方言であるウチナ-ヤマトゥグチが、第三のヴァリエーションとして安定的に認知されているのに対して、宮古では中間方言の生成は同様に観察されるものの、那覇におけるほど独立のヴァリエーションとしての認知度は高くないことが判明した。 2)においては、言語変化考察の前提として平成8年度に行った宮古諸島北部諸方言の基礎的臨地調査によって得られたDAT音声資料をもとに、近い将来消失が予想されている宮古本島北部の大神・狩俣方言について、『宮古大神方言の音声-単語と文法-(付.狩俣方言)』(平成8・9年度科研費成果刊行書:CDおよび解説書)を作成・刊行することができた。
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