研究課題/領域番号 |
08610533
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
文学一般(含文学論・比較文学)・西洋古典
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
水谷 智洋 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (10011321)
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研究分担者 |
秋山 学 筑波大学, 文芸・言語学系, 講師 (80231843)
大貫 隆 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (90138818)
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研究期間 (年度) |
1996 – 1997
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研究課題ステータス |
完了 (1997年度)
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配分額 *注記 |
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
1997年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
1996年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
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キーワード | 自然 / 神話 / 雷 / テキスト校訂 / 霊魂論 / 詩作 / 性的禁欲 / 子宮 / 秘儀 / 共同体 / 儀礼 / 無受苦 / 典礼 / 変容 |
研究概要 |
本グループは「古代地中海世界における神話伝承と自然観」の探求の一つの方法として、第一年目には時代区分を設けて、各々の時代における特徴的な神話伝承と自然観をとらえることに重点をおいた。その結果、古代地中海世界を生きた人々にとっての"神話"とは、自然、人間、そしてそれらを包み込む世界の"営み"を把捉すべく生み出されたことが明らかとなった。第二年目に本研究組織構成者はこの認識に依拠しつつギリシア・ローマの文学(水谷)、哲学的著作(秋山)、初期キリスト教・グノ-シス文学(大貫)の三つの領域に分担し、具体的な神話本文の分析を試みた。まず、自然現象を《転身》というモチーフでまとめたオウィディウスの著作に注目し、古代人にとって畏怖と驚嘆の対象であった雷を例にあげ、テキスト校訂を含めて徹底的に検証しギリシャ神話の背後に想定される人間による積極的な自然理解を明確にした。また、哲学者プラトンの中期著作『ファイドロス』に後期の「世界霊魂論」「立法論」の基盤としての「霊魂とエロースの神話」が存在することを確認した他(秋山)、エピクロス哲学にミュートス(神話)を取り込むことでその自然論を芸術的に展開させる可能性を開拓したルクレティウスの詩作を研究し、そのスタイルが後の詩人たちに多大な影響を及ぼした実態を明らかにした(秋山)。他方、グノ-シスの神話においては、神の世界から堕落し流出したこの世的なものが、救済に向かって営まれていると理解されている(救済神話)ことが明らかになったが、そこに言う「神」が、人間の理解や言語表現を受け付けない否定的な存在として、より鮮明に浮き彫りにされていることが確かめられた(大貫)。さらに、グノ-シス主義諸神話に共通する性的世界観から一歩踏み込み、ナグ・ハマディ文書の分析を通して浮かび上がって来た"子宮"としての自然理解をまとめあげることにも力を注いだ(大貫)。
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