研究概要 |
アメリカでは21世紀の伝統的家族は継親家族(stepfamily)であると言われ、3人に1人の子が18歳になるまでに継子になるであろうとの予測のもとに、すでに継親家族が直面するであろう家族法上の諸問題に対し検討を始め、あるいはすでに継親家族を射程に入れた立法化が進行していることを、本研究において明らかにした.しかし現在のところ、本研究が対象とした、扶養、監護権,訪問権、相続権の4つの法領域においては,依然,血縁至上主義を基本的に支配的な法原理としていることも,同時に指摘した.そしてこのような法状況は,近年、未成年子をかかえる夫婦の離婚件数の増加と再婚件数の漸増により継親家族が増加しており,今後、継親家族をめぐる法規制のあり方が問われるであろう、わが国においてもまったく同様であること,本研究で言及したとおりである.すなわち、日米両国における継親子関係をめぐる現行法規制のあり方は,継親子は非血縁であるがゆえに、実親子類似の実質的親子関係は形成されない、との前提に立つものである.しかし、このような法規制のあり方が望ましいとはいえまい.家族が多様化しその中でも継親家族が増加している現況があること、そして何よりも、継親子関係をめぐる経験的・実証的知見は、本研究で論究したように、継親子関係と実親子関係の性質上の差異はわずかであること、継親子関係の性質が継子の人格形成・精神発達にきわめて重大な影響を及ぼすこと、継親家族が破綻し易いのは法における継親の親役割が不明確で曖昧であること、を示しているからである.そうであれば,継子に対する愛情と献身への願望がある継親にも、子の健全な発育に必要な限りで一定の権利義務を明確にすることが子の利益に適うものと考えられる.カリフォルニア州検認法6454条が継親子関係の実質性を問う1つの審査基準となりうるものであるが,経験的・実証的研究のさらなる裏付けが必要となろう.
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