本研究は、地方都市の中心市街地の再生法制の展望を描き、その前提となる土地利用の現況調査を行なった。第一に、都市政策・法制における地方都市の位置づけの転換を分析する。現行の都市法制の中では、地方都市問題を大都市問題の同種かつ深刻さの軽いものと捉えている。しかし近年政府の一連の審議会が、地方都市の中心市街地の空洞化を既存の社会資本ストックを生かして克服する政策の転換を提言している。 第二に、地方都市の中心市街地の土地利用の動向を新潟市を例に挙げて分析する。新潟市は三大都市圏外の非政令指定都市であり、人口約50万人でひとつの都市圏を形成しているが、インナー・シティ現象も呈しており、これを商業地と住宅地に分けて分析する。 商業地では中小小売業が全般的には停滞・衰退傾向にある。しかし調査街区ではインテリア、衣料、雑貨を扱う商店が多く出店している。これらの商店に共通する特徴は、(1)趣味静性が高く少数だが固定した顧客を引き付けるような商品を自ら仕入れ、当該商店に固有の商品取り扱う、(2)経営者は40歳代以下、(3)立地が悪いあるいは建物が老朽化している等の理由であっても店舗賃料が安い物件に出店する等の特徴が見られる。 住宅地でも、不動産投資の停滞ならびに人口の減少・高齢化傾向が見られる。調査街区は住宅・商業・工業などの用途が混在している地区である。居住する世帯の特徴をまとめると、(1)現住地に代々住み続けて、不動産経営を行なっている持地・持家の世帯、(2)職業上の理由から当該街区内の居住に強い必要性を有する併用住宅の世帯、(3)中心部の住居の移転を重ねて、現住宅に居住する長屋住宅の世帯、(4)職業上の理由からマンションを賃借する世帯、(5)マンションを区分所有する世帯の5つに類型化される。
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