本申請に基づく研究は、社会的規制の緩和が遅々として進まない原因を探ること及び国民生活上必要のない規制を撤廃して、競争原理のスムーズな導入を図る方策を見出すことを主眼とした。そこで、社会的規制の中で国民の安全確保と良好な環境保全という見地から、種々の規制が行われている電気事業につき規制緩和の是非という問題を取り上げた。その視点は、(1)一般電気事業について個別のサービス・需要者層間(家庭ユーザーと企業)及び発電と送配電間をどれだけ細かく分けることができるかを、現在行われている発電・送電・配電の垂直的統合を分割することも視野に入れて、市場構造全体の在り方を検討すること、また、(2)一般電気事業者の各種サービス間における内部相互補助をどう規制するか、であった。 まず、社会的規制に関する事実認識を行うために、電力会社・国の機関(全国各ブロックの通産局、公取委)から聞取り調査及び電力事業に関する資料収集を行った。これらの調査結果及び資料等を精査した結果、(1)電気事業法と独禁法秩序との相互関係、あるいはその背後にある個別産業政策と競争政策との相互関係を把握することができた。また、同時に(2)行政庁による電気事業法の解釈及び法運用を抽出し、関係当事者間の利益衡量の分析を為し得た。その結果、(3)電気事業法の解釈及び法運用が、現実の政治的諸関係の中で国民にとってどのような意味を持ち得たかを理解することができた。この研究成果は、『競争法と消費者法の基礎理論-独占禁止法・知的財産権法・消費者保護法』(嵯峨野書院刊)で発表するとともに、この研究の分析手法は、『四国地区タオル産業の市場構造変化と流通実態に関する調査研究』(公正取引委員会事務総局経済取引局経済調査課刊)に生かすことができた。
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