本研究の目的は、60年代以降における地域社会の変容を「都市型社会」の成立という視角から検討し、韓国における住民自治の可能性を探ることにある。 第1章では、1960年代以降の韓国の都市化過程を、まず、その基礎となる政府の国土開発計画とその実績を日本との対比で検討した。ついで、そうした開発と産業発展に伴う都市化の過程を検討し、韓国社会が、90年代の中盤に至って、奥田道大の規定する「都市化社会」の最終局面、つまり、「都市型社会」の戸口にあって、大都市ソウルの衰退化がはじまろうとしている局面にあることを明らかにした。 第2章では、そうした社会変化を前提として韓国における地方自治制度の展開を検討した。まず、解放後の地方自治制度の成立、停止、そして91年の復活に至る過程をたどり、韓国地方自治制度の特徴と課題を概観した。さらに、91年の地方議会選挙と98年の地方団体長および議会選挙の事例研究を通して、韓国の地方自治制度の定着化とその問題点について検討した。 第3章は、90年代における韓国の住民自治の具体的な在りようを済州島の事例を通して検討した。ここでは、第1章で検討した中央主導の開発が地域社会に及ぼした影響を明らかにし、これに対する80年代以降の住民運動の特徴を検討した。その上で、90年代以降の韓国社会の住民自治をめぐる状況と課題を、済州島における住民自治の到達点に照らして検討した。
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