研究実績は大きく分けて次の二つである。 (1) 線形回帰モデルの係数毎の最小平均自乗誤差推定量(以下、MMSE 推定量)の二次損失のもとでのリスク関数を導出し、MMSE 推定量が通常最小自乗推定量(以下、OLS 推定量)を優越するための十分条件を示した。導出されたリスク関数の数値計算を行うことによって、回帰係数の数が3のとき、MMSE 推定量は Stein 型推定量よりも小さなリスクをもつことを示した。また、回帰係数の数が2のとき、非心パラメータの広い範囲にわたって、MMSE 推定量はOLS 推定量よりも小さなリスクをもつことを示した。なお、この研究は、従来の研究を発展させたものである。 (2) MMSE 推定量の自由度を調整して得られる自由度調整 MMSE 推定量 (以下、AMMSE 推定量) は、回帰係数の数が4以下のとき、原点の近傍で正値 Stein 型推定量よりも小さなリスクをもっている。このことから、回帰係数がすべてゼロであるという仮説に対する予備検定を行い、仮説が採択されれば、AMMSE 推定量を使用し、棄却されれば Stein 型推定量を使用する、という予備検定推定量を考えた。この予備検定推定量のリスク関数を導出し、予備検定推定量が Stein 型推定量を優越することを示した。また、導出されたリスク関数の数値計算を行うことによって、予備検定の棄却点が適切に定められるならば、回帰係数の数が3のときには予備検定推定量が正値部分 Stein 型推定量よりも小さなリスクをもち、回帰係数の数が4のときには予備検定推定量と正値部分 Stein型推定量のリスクはほとんど同じであることを示した。
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