研究概要 |
1、この研究は、鉄鋼業のリストラクチャリングと重層的労働編成に関する研究である。S社の生産高は減少し、リストラクチャリングが行われている。生産高の減少率は新鋭製鉄所よりも旧製鉄所が著しく、旧A製鉄所の生産高は最高時の4分の1に減少している。S社は下請企業への業務移管や出向を進めており、出向率は4割に達している。S社は1997年に新賃金制度を導入し、従来の職務給中心から能力給中心の賃金体系に変えた。能力給は84%に達している。 2、旧A製鉄所では1992年に機動班体制を導入し、多能工化をさらにおし進めた。労働者を職場に固定するコア部分と機動班に属する部分にわけ、後者の労働者を徹底的に多能工化した。彼らは工場内の全ての作業をしなければならず、幅広い技能と知識が要求される。他方、「自主整備体制」も多能工化を促進する手段である。それはラインのオペレータに保全工の作業を兼務させるものである。その結果,オペレータと保全工の割合は9:1になった。 3、新鋭のB製鉄所はS社の中核企業であり、AIを導入して生産性向上を進めている。AIの導入によって労働の簡単化は進んだが、一方で、マニュアル化されない新たな経験的熟練が生まれた。この熟練は旧来の熟練とは異なり、コンピュータ段階的なものであり、その習得には機械やコンピュータについてのメカニズムの理解が必要である。 4、鉄鋼業は下請企業が多数配置される重層的編成である。下請企業の再編成が進められ、作業分野ごとに社外企業1社を配置する「1業種1社制」が行われている。再編成は旧製鉄所よりも新鋭製鉄所の法が進んでいる。S社の合理化要求に対応して人員の削減,組織のグループ化、2次下請の活用,新人事制度などのリストラが進められている。
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