日本の電力産業の生産効率に関する実証分析を行った。特にその分析において重要な役割を果たす資本価格について検討し電力産業の資本構造の特殊性について計量的真実を見い出した。 企業の生産効率を検証する時、生産要素の配分効率性が達成されているか否か、特に規制産業である電力産業については、多くの研究がある。報告者も以前同じ問題を検証し、その対象期間内では、効率的生産が規制の存在にも拘わらず達成されているという結果をえている。本研究も、この問題を異なった角度から再検討している。 効率性を検定する方法は、資本とその他生産要素との限界代替率と相対的要素価格比の均等検定を行うが、資本価格は、資本の定義によりその測定値が異なる。我々は、資本用役価格を資本コストとしてとらえ、検定総計量として日本の9電力会社の1967年-85年までの総合資金コストを計測した。これを資本価格として、資本その他生産要素(労働、燃料)間限界代替率と価格比の均等仮説を検定した。火力発電に関し、1979年-85年までの6年間資本・燃料、資本・労働間の効率的投入が行われたという結論をえた。この分析の過程で、日本の電力産業の資本構造と資金コストと規制産業の関連を分析する必要のあることが明確になったことは興味深い事実発見であったといえる。
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