研究概要 |
本研究では,三菱重工名古屋航空機製作所で生産された100式司令部偵察機の生産システムの全体像と,そのシステム設計の構想過程,およびシステムの戦後への連続的側面の可能性を明らかにすることが目的であった。 この目的を達成するために,旧三菱名古屋航空機製作所のOBや関係者へのヒヤリング調査と所蔵資料の調査を実施するとともに,名古屋・東京の三菱重工での調査,国会図書館・日本経営史研究所・東京商工会議所図書館で,所蔵文献・資料の調査を実施した。 調査と分析の結果,明らかにされた主な成果の概要は,次の通りである。 まず生産システムの全体像についてみると,とくに内製部品工程と組立部品工程との連動について,当時,かなりの創意と工夫が施された経過が明らかにされた。いわゆるカンバン方式への方向性をもったシステム観があったことが確認できた。 次に,そのシステムの構想と具体化の過程においては,当時の日本能率協会を中心とする科学的管理の運動とのつながりや,技術者と職人的技能者との連携があったことも,部分的ながら知ることができた。いわゆるJモード型の情報交換システムの潮流を確認できたといえる。 第3に,戦後との連続・非連続との面については,具体的な方法論での連続面を析出するにはいたらなかったが,戦後の自動車生産などへ人材面での連続性があったことも部分的ながら確認できた。 今後の成果発表については,以上の成果をとりまとめて,さらに追跡調査をもって補い,学会誌などへの投稿を考えている。
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