研究概要 |
地方財政は地域経済に財政学的考察を加えるものである。したがって、経済的な相互依存関係と財政的な政府間の相互依存関係がどのように関連しあうかが研究の中心的課題である。 科研費の助成を受けた本研究は2種類のタイプのものに分けることができる。1つは財政的側面を重視したものであり,いま1つは経済的側面を重視したものである。前者の研究は次の2つの研究「中央政府による財政支援の問題」(『神戸の復興を求めて』103-118,神戸新聞総合出版センター,1997年5月),「中央と地方の財政構造-戦後財源調整制度から見た一考察-」(1997年度日本財政学会報告)である。これらはともに神戸大学の玉岡雅之助教授との共同研究である。 これらの研究は,中央政府が何がしかの評価(厚生ポジション)を各地方に対して持っており、それによって財源の再分配をおこなっていると理解したとき, (1)中央政府の地方に対する評価をデータから数値化する。 (2)各年度の数値化された評価を見ることによって地方財政の在り方を評価する。 (3)阪神大震災の支援額の決定について応用する。 というものである。とくに、課題(2)について,「戦後一貫して都市部が地方に比べて中央から高い評価が与えられてきた」が得られた。 経済的側面に焦点を当てた研究は「法人税の地域間の人口移動に及ぼす効果について」(未発表論文)である。法人税の経済的効果の研究は租税帰着論が中心的議論であった。これは税の負担が誰に帰着するかという問題設定であった。これを法人税が人口移動にどのような効果を持つかという視点に変えて展開したのが本研究である。得られた結果は「法人への配当課税は都市部の人口を減少させ、留保分への法人課税は都市部の人口を増加させる」というものである。
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