研究概要 |
日本の企業が国内外で発行した転換社債・ワラント債についてデータを収集し,転換行動について本格的な計量分析を行った結果,以下の点が明らかになった。 ●アメリカン型オプションとしてみた転換社債は,投資家にとって権利行使(転換)が最適とは思われない状況下でも転換が行われている, ●転換を行う主体(その理由)として,大口投資家や証券会社(大口の売買がひきおこすマーケット・インパクトを避けるため),および証券会社(引受け幹事獲得など発行市場への影響も考慮しつつ,流動性供給などマーケット・メイクを行う上では,在庫管理上必要となるため)など,一般(大衆)投資家とは違った利害をもつ主体の蓋然性が高い, ●売買高が多く転換社債価格もパリティを上回る状況にある転換開始時と,売買高が減少し転換社債価格がパリティ前後にある転換進捗時とでは,転換主体(およびその理由)の蓋然性が異なる-上記2主体のほか,転換という迂回的な方法で投票権としての株式取得をねらうものの蓋然性は,転換進捗時には低いが開始時には無視できない-, アップ率など発行条件が固定的であり,発行時には割当による需給調整がおこっていたと考えらる。これらと多数の投資家に消化(売却)しなければならないというルールとも相俟って,発行直後は盛んに取引されるが1〜2年もすると取引が減少すること, 株価に比べ転換社債価格が低すぎるという現象が,バブルの後半から現在に至るまで万遍なく見受けられた。これが本当に無リスクの裁定機会であったかどうかは,株式をショートするコスト,とりわけ追加証拠金のコストをどう評価するかに依存する。 追加証拠金のコストの評価モデルを組込んで,裁定機会の有無を検証することを今後の課題としたい。
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