研究概要 |
自動車産業は自動車組立て企業(アッセンブラ-)と部品サプライヤーで構成される複雑な企業ネットワーク構造を持つ。ネットワーク構造に関する理論的な枠組みを作り,それが企業成果へもたらす影響を分析することが本研究の目的であった。 第一に、アッセンブラの視点から,広範な調達ネットワークを活用することのメリットを論じた。実証的には、近年高業績をあげている自動車メーカーは,部品サプライヤーと協調的な関係を維持しながらも,その特定部品サプライヤーとの排他的な関係に依存するのではなく,広範な部品供給ネットワークを活用することによって競争優位を獲得していることを提示した。 第二に、サプライヤーの顧客ネットワークの範囲(顧客数)が企業成果に及ぼす影響を数量的に分析した。サプライヤーの顧客ネットワーク戦略が企業成果に及ぼす関係については,データが豊富な日本企業のデータを利用して検証した。125社のサプライヤーを分析した。顧客範囲の企業成果への影響を検証するために,重回帰分析を利用し,企業規模や売上トレンドなどで制御した。結果としては,顧客範囲が企業成果に正の影響をもたらしていた。 最後に、米国(MIT)の共同研究者と共に,ネットワーク分析によって日本比較を実施した。15部品のデータを利用し,各顧客が調達を受けるサプライヤーの数と,各サプライヤーが供給する顧客の数を分析した。米国の方が,各顧客あたりのサプライヤー数は多かった。逆に,顧客の共通サプライヤー利用率は日本企業の方が高かった。特に,トヨタとダイハツのような関連企業だけでなく,マツダと三菱のような直接関係のない企業間でのサプライヤー共通利用が顕著であった。この点では,現状でも日本の自動車産業は系列的(排他的)な関係ではないことが確認された。
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