研究概要 |
配当政策,新株発行及び自己株式買い戻しに関する研究を行った。 配当に関する理論モデルは,税ベースモデル,シグナリングモデルなど様々な形態が存在し財務政策を考察するうえでは有益であるが,これらのモデルには,実証分析によって解かれるべき問題点が数多く含まれている。ここでは,これらの問題を考慮した上で各モデルの実証結果を述べる。 1. Fama,E.,and Babiakは,Lintnerモデルを推定し,それが配当政策を合理的に示していると結論付けた。 2. Robert,Macdnald and Naomi Soderstronは,Lintnerモデルを否定し,キャッシュフローが豊富か否かによって配当政策は異なるという税ベースモデルを支持しているように思える。彼らは,増資をしない企業が配当を安定化するという実証証拠を見つけることはできなかった。企業が株式を発行する時,配当成長率はかなり負になると考え,企業が増資をする時,企業はより低い配当を支払うであろうという税ベースモデルを支持している。 3. Kalay,Avnerは,Lintnerモデルを否定し,経営者の減配への抵抗の存在を検証するため,減配が経営者の自由にならない減配であるという仮説を検定した。この様な経営者の意図しない減配の大きな割合を見つけることは,減配に対するシグナリング効果の意味に対し疑問を投げかけることになるからである。しかし,かれはこの経営者の意図しない減配は全体の5%だけしかなく,減配のシグナリング効果に反論できなかった。 この様に配当に関する理論モデルには,様々な形態が存在しているが,それらを実証できるような統一的,包括的な実証可能なモデルはまだ存在していないように思える。
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